「受け」突破の基本

どうして「受け」の突破が困難なのか

まず、どうして「受け」を突破するのが困難なのかというところから考えて見ましょう。

その根本的な理由として考えられるのが、「受け」られるときしか場にいないから、ということが上げられると思います。一般的に「物理受け」と呼ばれるとはいえ、ギャロップ相手に場にのこりつづけるエアームドはいませんよね。役割理論といえばすぐに「物理受け」「特殊受け」がある、という考えに走る人がいますが、それはGBA時代の話であって、今現在において別にエアームドの役割は「物理受け」という一言ではあらわせませんし、当然エアームドはギャロップに対して「受け」の役割は持ちません。具体的に場面を考えてみると、こちらがギャロップとマンムーを所持していたとして、ギャロップがいくらエアームドを突破できるとはいえ、この場面においてエアームドがマンムーに対してしか「受け」の役割を担わない以上、ギャロップがエアームドにフレアドライブを放てる場面すら訪れないということになります。

つまり、「受け」というものが、そのひとつひとつの場面において限定的に発生する役割である以上、その限定的役割でどうにかして突破しなければ、場を変えてしまった後では、「受け」として機能しない「受け」を場に残らせる人はいないというところが理由だと考えられるわけです。

役割破壊:「受け」られている状態で「受け」を突破する

例えば一般的なマンムーは基本的にエアームドを突破できません(がむしゃらを上手く絡めることで可能な場合もありますが)。なので上記の理論で説明するならば、マンムーに対して「受け」の役割を持つエアームドは、マンムーvsエアームドという場である限りは居座ってきます。

ここでマンムーを他のポケモンに変えると、エアームドから、その場においての「受け」という役割が消失するため、エアームドは引っ込んでいき、またマンムーを出したときに出てくるため、いつまでたっても突破が不可能です。つまりマンムーのままで得アームドを突破する必要があるんですね。

ここで例えば、マンムーの特功や素早さを少し調整し、いのちのたまを持たせて、ふぶきを覚えさせることで、エアームドをふぶき2発で突破することが可能であるとします(素早さ調整は、エアームドよりも素早くしておくことで、エアームドに先にはねやすめを使用されることがなくなり、ひこうタイプを持ったエアームドに対してふぶきを打つことが可能になるという意味です)。これは本来のマンムーに比べて、攻撃や耐久に割ける努力値が減ってしまい、マンムーとしての性能自体は当然落ちてしまいますが、エアームド限定で考えれば、本来ならばエアームドがマンムーに対して「受け」の役割を持っているはずの状況において、これを覆してエアームドの「受け」を崩壊させることが出来ます。

本来なら「受け」られてしまうところを、二刀流(こうげきに努力値を振った物理アタッカーに特殊攻撃技を持たせたり、とくこうに努力値を振った特殊アタッカーに物理攻撃技を持たせたりすること)にして効果抜群の技を当てたりすることで突破できるようにしたり、どくどくなどの補助技を使って役割を崩壊させることが多いです。

どくどくに関してさらに詳しく説明すると、回復技が再生回復のポケモンであれば毒のダメージが増えていくと居座れませんし、ねむカゴ(ねむった直後にカゴのみで目を覚ますコンボ)のポケモンなどに毒のダメージを与えていき、ねむらせてカゴのみを消費させてから、再び毒をあびせて、カゴのみがない状態でねむるを使わせることで突破する「素眠りに追い込む」戦法なども昔から有名ですので覚えておくといいでしょう。

これらの方法を上手く使うことで、場を変えずに「受け」の役割を崩壊させることを「役割破壊」と言います。

また、だいばくはつで突破する場合は、自分自身は生き残れないので、後続にいるポケモンのために「受け」を突破するという意味で、「間接(的)役割破壊」と呼ばれます。メタグロスでみずタイプのポケモンにだいばくはつをして、ほのおタイプのゴウカザルで攻めるなどの戦法はとても有名です。

縛り:「場」を変えさせずに潰す

これも有名な戦術です。「縛り」という名前が決まっているわけではないのですが、イメージ的には縛る感じです。

先ほど上記で、ギャロップに変えるとエアームドの「受け」の役割が消失するのでエアームドは引っ込み、結局突破できないという趣旨をお話しました。では、相手の「受け」の役割が消失したあとも引っ込めさせなければ突破できるという単純な発想です。
例えばギャロップではなく、特性が「じりょく(鋼タイプのポケモンは交代できなくなる)」のジバコイルに交代するとどうでしょう?。ジバコイルに対してエアームドは「受け」の役割を持たないので引っ込もうとしますが、じりょくのせいで引っ込むことができませんから、ジバコイルの10まんボルトによって突破されてしまうでしょう。これでエアームドに受けられていたポケモンは自由に暴れることが出来ますね。

ジバコイルでの鋼狩りが有名で、またソーナンスとダグトリオのコンボを使ったソーダグも有名です(ソーダグというのは、「受け」の役割を持っているポケモンに対してソーナンスをぶつけ、アンコールをし、補助技にアンコールがかかればダグトリオに交代して突破、攻撃技にアンコールがかかればカウンターやミラーコートでそのまま突破というコンボであり、ソーナンスもダグトリオも「かげふみ」「ありじごく」という相手の交代を禁止する特性を持ちます。)

メジャーな「受け」構成と具体的な突破方法

具体的に

「受け」突破の概念は一通り理解していただけたと思いますが、それでは実戦でどうすればいいのかというのは、いきなりは分かりにくいでしょうから、いくつかの有名な「受け」の構成とその突破方法を説明しておきます。

ハピナスを使った「受け」構成

特殊攻撃をハピナスに受けさせることを起点にして構成される「受け」トリオです。ダイパまではさいみんじゅつの性能が良かったので、ゲンガーでハピナスを眠らせることで簡単に突破できたりもしたんですが、プラチナ環境においては、基本は物理受けの片方を潰して、物理アタッカーを暴れさせるのが良いでしょう。
グッドスタッフ系(単体で強いポケモンのみを投入した、あまりシナジーやコンボを考えないパーティー)において多く見受けられます。

【具体例1】
エアームド/フォレトス+ヤドラン+ハピナス
ヤドランで格闘タイプを、エアームドやフォレトスでヤドランでは厳しいヘラクロスやハッサム、マンムー、ガブリアスを受ける構成。
突破方法として簡単なのは、エアームドやフォレトスをジバコイルで処理すれば、ヘラクロスなどで残りを処理できる。ヘラクロス自体は、ヤドラン・ハピナスには強いが、ゴウカザルなどに死に出しや半減技読みで流されるので、1回1回の攻撃を重くしていきたいところ。身代りを使って交代で出てきたポケモンに適切な攻撃技でダメージを蓄積させるか、こだわりハチマキでダメージ量を上げるかなどが理想的。
また、とんぼがえりを覚えたゴウカザルなどは3匹ともに強さを発揮するが、相手のボーマンダやギャラドスなどの決定力の微ダメージでの降臨などにも繋がるのでゴウカザルで突破を目指して回すならステルスロックが欲しい。
クロスチョップ・かえんほうしゃ・10万ボルトのような構成のエレキブルで電気技読みで出せれば、それも理想的。

【具体例2】
グライオン+ミロカロス/シャワーズ+ハピナス
こちらはグライオンで格闘タイプ全般を受ける形。ゴウカザルやルカリオなどの特殊技の絡む二刀流系の格闘タイプや、格闘タイプ以外の物理アタッカーはミロカロスやシャワーズに任せることが多い。ミロカロス/シャワーズは、ギャラドスを意識しためざめるパワー電気を持っていたりする。
メタグロスなどのだいばくはつでミロカロス/シャワーズを間接役割破壊することができれば、マンムーやマニューラなどの氷タイプの物理アタッカーや、ギャラドス、ラグラージなどのみずタイプの物理アタッカーが活躍できる。
ゴウカザルについては草結びがあればミロカロスにも大きなプレッシャーをかけられるがとんぼがえり以上にギャラマンダに弱くなるので注意。
クロスチョップ・めざパ氷・10万ボルトのような構成のエレキブルで電気技読みで出せれば上記同様に理想的。

タイプ相性を利用した「受け」構成

タイプ相性を利用した「受け」構成で、天候パーティーなどの攻撃的な構成で組みたいパーティーでよく見られます。

【具体例3】
グライオン/エアームド+ミロカロス/ドククラゲ/シャワーズ+ユキノオー
格闘受け+水タイプ(炎受け)+水・電気受け。一概に弱点が見つからず、またユキノオーのやどみがなどにより受けられない相手に対しての誤魔化しもきく構成です。
グライオンとエアームドはヘラクロスに対して安心感の強いグライオンの使用率のほうがやや高く感じます。霰パーティーであればトドゼルガと相性の良いどくびしを覚えるドククラゲが人気で、それ以外であればミロカロスのほうがやや人気でしょうか。
それぞれの「受け」範囲は余り広くないのですが、タイプ相性が本当によいため、突破には苦労するでしょう。ユキノオーと水タイプの両方に強いジバコイルがいると突破しやすくなりますね。ただユキノオーの地震も怖いです。
交代読みで攻撃技を放っていって突破するのが最も一般的です。例えばグライオンに対してラグラージを出した場合は、ユキノオーを読んでのストーンエッジなど。グライオン、ミロカロス、ユキノオーの構成だとどくどくが刺さりますが、ドククラゲやエアームドがいるとどくどくをうちづらいです。
一応、大爆発でグライオンか水タイプ受けのどちらかを倒せば突破口が見えてきます。水タイプが落ちればゲンガーなどが活躍でき、グライオンが落ちれば格闘タイプなどが活躍できます。

【具体例4】
ドククラゲ+フシギバナ+ヨノワール+エアームド
2007年の春~夏にかけて大流行したソーダグパに対するアンチとしてこれまた大流行した昆布パーティーにおいて主に採用されていた構成です。ドククラゲの毒びし、エアームドのまきびし(先発はプテラでステルスロックが多かった)を展開して、こうそくスピンをヨノワールで透かします。とにかく受けが多くて対戦時間も長引いたりと大変な時期でした。
再生回復持ちの受けが少なかったことから砂パーティーや霰パーティーなどの定数ダメージを見方につけたビートダウン(攻撃主体のパーティーの総称)の流行に伴って衰退していったことから、ダメージを与える天候に弱いことが推測されます。現在は殆ど見かけません。

その他

色々な受け構成を見ることがあると思いますが、役割破壊などを考えていけば突破口は見えてくると思います。あとはどこまで意識するか、どこまで対戦勘に頼るか、など人それぞれだと思いますので、本当に基本の部分だけコラムにさせていただきました。